映画の紹介
ひかりを食べたら、みんな幸せになる
ここ数十年で豊かになったはずの食生活。けれど便利になる一方、愛情のこもった温かいごはんが、日々、失われていっています。
同時に、日常の中にあった本当の幸せも忘れてしまっているのではないでしょうか。
「どうしたら幸せになれるんだろう?」
「家族に何を食べさせてあげればいいの?」
そんな人生の答えを求めて、全国から人が集まる店があります。
大阪府枚方市の楠葉という小さな町にある「御食事ゆにわ」。

それから12年が経ち、今、彼女の作るごはんにひかりを感じて、本当の幸せを見つける人がたくさんいるのです。
この映画は、そんなゆにわの一年間と、食べ方を変えて生き方が変わった人たちの想いを集めた作品です。

映画のストーリー
ここの料理には食べた人の奥底にある何かを変える不思議な力がある。
御食事ゆにわ。オープンして12年目になるこのお店を切り盛りするのは、店長のちこさん。
ゆにわの食卓に並ぶ料理は、決して派手ではない。しかし、そこには、どこか、温かさや懐かしさを感じる。
四季折々の食材を使った、季節の料理。米、塩、水、清酒、味噌、醤油などの日本古来の調味料や、野菜、豆類、海藻類、魚介類、鶏などを使った家庭料理がその基本になっている。

その料理を食べて感動し、涙する人も。訪れたお客さんからは、感謝の手紙が次々によせられる。何がそこまで、人の心を魅了しているのか。
私が料理を作る相手はお客さんじゃなくて家族なんです。(ちこ)
ゆにわの料理の原点は、家族や仲間に出す、究極の愛情料理。ゆにわのごはんが食べた人をまるで子どものような笑顔にしてしまう秘密は、そこにある。ちこさんが毎朝欠かさず作り続けている、ゆにわの名物がある。何の変哲もない、具も、海苔もない、真っ白な、塩おむすび。

一口頬張った瞬間、思わず笑みがこぼれる。
自然と悩みが消えていく。乾いた心が満ちていく。感動のあまり、涙が頬をつたう。

それは温かくて、優しくてとても美味しかった。
実は、この塩おむすびこそ、ちこさんの原点になっている。今でこそ、多くの人を元気付けているちこさんだが、以前は、生きる希望を失ってしまった時期があった。高校生時代、成績もスポーツも優秀で、たくさんの友人に囲まれていた。はたから見れば順風満帆な生活そのものだが、多くの人に愛される、明るいイメージとは裏腹に、ちこさんの心の中にはいつも苦しさがあった。

恋人との別れ。友人の裏切り。顔中にできたたくさんのニキビ。あらゆることが、上手くいかなくなった。心身ともに限界だった。
そんなちこさんを救ったのが兄の誘いで通いはじめたミスターステップアップという塾の、「先生」との出会いだった。先生はよく、塾生におむすびを振舞ってくれた。それを一口頬張った瞬間、とめどなく涙が溢れた。
温かくて、優しくて、とても美味しかった。もともとちこさんは、白いご飯は嫌いだった。しかし、先生の握った光輝く「塩おむすび」だけは、特別だった。

先生は、決して勉強しろとは言わず、ただ優しく、時には厳しく見守り続けてくれた。
次第にちこさんは元気を取り戻し、自ら机に向かい、勉強に励むようになった。
一年後、そこには見違えるほどの、幸せと希望に満ちた、ちこさんの笑顔があった。

私もこんなおむすびを作れる人になりたい。
ちこさんは決心した。それが、ゆにわの始まりだった。先生が作ってくれた愛情料理。今ではちこさんがその愛情料理を引き継ぎ、塾生たちを支え、応援している。ちこさんがいた頃は20人ほどだった塾生も今では全国から毎年約100人も集まるほどになった。

ゆにわの周りには、さながら大家族のような毎日ゆにわでごはんを食べる人たちがたくさん。年齢層も、職業も、出身地も、みんなバラバラ。けれど、文字通り同じ釜の飯を食い、本当の家族のように仲がいい。なにより、その空間はいつも幸せな空気に満ちている。

料理には、作り手の状態とそのお店の持つ空気がありのままに表れる。
ゆにわでは、料理以前に、場を整え、自分自身を整えることを大切にしている。隅から隅まで手作業で店内を掃除し、場を清める。毎朝、スタッフ全員で、今日出会うご縁ある方々の幸せを祈り、手を合わせる。
仕込み中であっても、その意識は絶やさない。失敗が続いた時、問題が起きた時は、全員で手を止め、厨房や自分自身を整え、仕切り直す。

映画『美味しいごはん』はひかりのごはんを食べて人生が変わった人たちの姿を、一年間フィルムにおさめてきた。
食べ方が変われば、人生が変わる。その真実に、ふれてほしい。